本えいが遅報

本と映画の感想ブログ

第007感 伊藤計劃 著 『ハーモニー』・・・ハーモニーの意味とは?

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<!DOCTYPE etml PUBLIC :-//WENC//DTD ETML 1.2 transitional//EN>

<etml.lang=ja>

<body>

これは

<list:item>

 <i:御冷ミァハの>

 <i:零下堂キアンの>

 <i:霧慧トァンの>

物語で

 <i:世界中に核が落ちて>

 <i:世界中でガンや白血病が蔓延して>

 <i:世界中が健康に敏感になった>

世界です。

</list>

 

<explanation>

世界のほとんどすべての「政府(ガバメント)」が「生府(ヴァイガメント)」となり、人類すべての生命尊重を第一理念とした生命主義社会が形成されています。「自身は社会の大切な人的リソース(資源)である」との考えが世界を覆っていて、殺人はもちろん、自殺も大きな差別の対象となります。身体が成長する子供のうちは導入することのできないWatchMeというソフトウェアを、大人になったら導入します。これは身体の恒常性を見張るためのもので、栄養が足りなかったり、極度のストレスにさらされたりしたときには、警告を生府から勧告される仕組み。

 

先ほどからHTMLのような記述がみられるかと思いますが、これは本書でみられる記法です。主人公トァンの感情を表現するかのようにsurpriseやhorrorが登場します。読みはじめのうちは、英語ということもあり、少し戸惑いましたが、読み進めていくうちにそんな戸惑いはなくなり、この記法がないとトァンの感情が感じられなくなってしまう気がしてきました。

 

<surprise>

そして、このetml記法の意味は本編の最後で明らかにされます。この種明かしによって、ミステリの謎解きに似た一種のパラダイムシフトが起こるでしょう。結構な驚きでした。

 

</surprise>

また、この種明かしの直前では、びっくりするようなetmlが用いられています。

ここで注意していただきたいのが、日常生活でetmlを用いないということです。

 

 <confession>

以前、友人とのメールで回想のためにrecollenctionを入れてしまったことがあります。後になって恥ずかしいことをしたと思ったのですが、送信先の相手は、何事もなかったかのように返信してくれたので事なきを得ました・・・・・・。

 

 </confession>

「やっぱり伊藤計劃だな」と思うところが、もちろんいい意味で多々あります。近未来世界のSF描写は『虐殺器官』と同じように素晴らしい表現となっています。さらに、核戦争からくる放射能の影響による世界的な病の蔓延と生命主義社会の形成は、このままの現実世界の地続きと考えても差し支えないものです。話の流れとしては、『虐殺器官』の続きであると考えられます。

 

</explanation>

<recommendation>

Project Itoh印のSF小説として、安心のクオリティです。また、『虐殺器官』と同様に感情を考察対象としているので、前作がお気に入りになったのならば一読をオススメします。もちろん、本書から読みはじめても面白いことは間違いないと思います。そして、タイトルにもなっているハーモニーの意味を「感じて」ください!

 

</recommendation>

</body>

</etml>