本えいが遅報

本と映画の感想ブログ

第020感 豊川一夏 著 『あの夏で待ってる1』・・・1度きりの、あの夏。

本書はアニメ『あの夏で待ってる』のノベライズで、著者である豊川一夏氏の処女作です。

 

 

テーマは王道のボーイミーツガール。そして、ヒロインの貴月イチカは宇宙人。頭の中にある「イメージ」を探して地球まで来て、高校3年生として小諸学園に転入します。1年生で主人公の霧島海人(かいと)とその仲間たちがイチカを誘って映画撮影を行います。

「なんかしたいね」から始まる映画撮影でしたが、海人とイチカが1つ屋根の下で暮らすことになり、海人の仲間である柑菜、哲郎、美桜たちの関係が変わっていきます。

 

 

アニメ版とストーリーの違いはほとんどありません。1巻での展開は沖縄編前半までです。話のポイントごとに挿絵もあって面白い。アニメと決定的に違うところが心理描写です。イチカの登場によって海人たち4人組の心が揺れ動きます。アニメでは、いくつかのモノローグを挟みながら話が進んでいきますが、キャラクター全員の心情を描くには尺が足りませんでした。そこで本書の登場です。インターミッションと称して、ストーリーに沿いながらの1人称になります。

 

主人公がピックアップされるからか、アニメ版では同性である哲郎の心の動きがあまり読み取れませんでした。ですが、本書終盤での哲郎の行動理由が哲郎の1人称でたっぷりと書かれています。普段クールな二枚目を演じている哲郎の悩みが吐露されます。

 

檸檬(れもん)というイチカの同級生も映画撮影に加わり、それぞれの関係はカオスなものになっていきます。檸檬の声優は田村ゆかりさん。脚本とキャラクターデザインをそれぞれ黒田洋介氏と羽音たらく氏が担当していて、このコンビは『おねがい☆ティーチャー』と『おねがい☆ツインズ』からなる『おねがい』シリーズを生み出しています。この2作品に参加しているのが田村ゆかりさん。前シリーズでは重要な役割を担っていたことから、本作でも檸檬に注目が行きました

 

高校生の甘酸っぱい青春がまぶしい作品です。