本えいが遅報

本と映画の感想ブログ

<小説感想> 長谷敏司 『メタルギア ソリッド スネークイーター 』

本書は小島プロダクションが制作しているゲームの『メタルギアソリッド』シリーズ第3弾をノベライズしたものです。

 

 舞台は冷戦下のソ連。シャゴホットと呼ばれる核搭載型戦車を開発させられている技術者をアメリカ側に奪還する任務を負ったスネーク。帰路の橋で彼を待ち受けていたのは師匠のザ・ボスであった。ソ連へ亡命した彼女を抹殺する任務を受けたスネークは、彼女が率いるコブラ部隊を相手にしながらソ連のなかを潜入していく。

 ゲームのノベライズで頭を悩ませるのは、物語の要所で織り込まれるボス戦の描写であると思います。ほとんどのゲームでは、ボスの弱点を見つけ、こちらの攻撃を的確に当てていくことを繰り返すだけで、メタルギアシリーズでもその傾向にあります。したがって、この単調な作業をどうやって文章で表現するのかが、ゲームのノベライズのキモであると考えられます。

 

本作ではとてもよくボス戦が描写されていました。その中では、狙撃手のジ・エンド戦が一番印象に残りました。

ジ・エンドとの狙撃戦はゲームだと、森の中をサーマルゴーグルなどで観察して隠れているジ・エンドの居場所を特定し背後から近づいて銃撃、ダメージを与えたらまた特定して銃撃・・・・・・の繰り返しです。実際には頭を打ち抜いてしまえばそれで決着がついてしまうので、本作では驚くほどあっけなく、刹那的に戦闘が終了しました。

 

スネークの心情も、ゲームでは無線による仲間との通信を聴くだけでしか推し量れませんでした。ノベライズともなると、十分にそして的確に感情表現が描かれていたと思います。

 

伊藤計劃氏が著した『メタルギアソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』はかなりのページ数でしたが、本作も500ページ以上ありボリュームたっぷりです。しかし、適切な情景描写と心理描写があるおかげで、諒作とも興奮しながら読み進めることができました。

 

私はゲームをやったことがあったので結末を知りながら読んでいきましたが、原作ゲームをやったことがなくても楽しめる作品であると思います。