本えいが遅報

本と映画の感想ブログ

<読書> 畑村洋太郎・吉川良三 『勝つための経営』

アベノミクスの影響で賃上げが叫ばれる中、以前から本棚にあった本書を読んでみました。

スマホで目にする韓国企業のSAMSUNGと米国企業のAppleリーマンショック以降の不況を最低限のダメージで乗り切った手法と、乗り切れなかった日本企業の違いをサムスン電子で常務を10年間も務めた著者がまとめています。

 

まとめ

本書では、日本企業が不況の波から復活できなかった原因は「円安と日本の税制ではない」としています。日本は戦後の高度経済成長の時代から獲得した技術の上にあぐらをかいて、それを活用する戦略を考えてこなかった。これが原因で、以前は日本の技術をマネするだけであったサムスンに追い抜かされてしまったとのこと。

日本企業は「ものつくり」における「つくり」には長けているが、新しい「もの」を創造するのは苦手であるから、そこを改善するべきだと著者は考えています。

「もの」とは消費者のニーズに答え、さらにはニーズを企業側から開拓すること。

「つくり」とは今ある部品や製品を、小さく高品質にすること。

 

職人気質という言葉に代表されるように、日本は個人の技術でつくりたいものをつくり、今まではそれが世界のニーズに合ってきました。しかし、最近のグローバル社会においては、物価の低い発展途上国の市場をターゲットにしなければ企業の成長は望めません。高品質を求める先進国を相手にする分には職人が製作した高価格な製品でも問題なかったのが、途上国ではほどほどな機能で低価格が望まれます。

サムスンは綿密な市場調査を行い、目的とする地域ではどんな機能が必要で何が不要なのか。これを研究した結果、無駄な機能を省いた現地のニーズに合った製品を低価格で提供することに成功しました。

日本がこれから経済的に復活するためには「秘伝のタレ」が重要らしい。「秘伝のタレ」とは、当人たちも気づいていないかもしれない競争力の源となりえるネタのこと。つまり、その分野ではあまり利益の出にくかったものが、他分野に進出することでシェアを伸ばすことができるような技術やコツ。

ただつくりたいものをつくるのではなく、自分たちの技術をどうすれば生かせるかを研究することが、これからの日本企業に必要であるそうです。

 

感想

私とは異分野の内容でしたが、具体的な例示が多くあったので読み進めることができました。また、サムスン電子で実際に10年間勤めていた方が著者の一人であるので、内容も濃く、面白かったです。

ただ、もう少しコンパクトにまとめられていれば、よりサクサクとページをめくれたのではないかと思います。

 

勝つための経営 グローバル時代の日本企業生き残り戦略 (講談社現代新書)

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