本えいが遅報

本と映画の感想ブログ

<映画感想> 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』

2000年公開でトリアー監督、ビョーク主演のデンマーク映画です。

主人公の空想シーンがミュージカルになっている、あまりみられない演出が特徴でした。

あらすじ

母親のセルマ(ビョーク)は周囲の人たちの好意に支えられながら、息子のジーン(ヴラディカ・コスティック)を育てようとする。セルマは工場の夜勤もしてジーンの目の手術費用を工面しようとするが、セルマ自身もその遺伝病によって盲目になってしまう。せっかく貯めたお金も、昨日まで親切にしてくれていた隣人に盗まれてしまう。

 

感想

まず最初に感じたのが、映像にカットが多く展開が飛び飛びであるということでした。隣人の家へ行くのに途中の移動シーンは省かれ、セルマが舞台の稽古をするときにもパパッと場面が切り替わります。調べてみると、映像が不連続になるよう編集するこの技法はジャンプカットと云うらしいです。

遺伝病によって盲目になっても工場で働くセルマを観ていると、いつ機械に手を挟まれるのか不安になります。家へ帰るにも、いつトラックにひかれるのか冷や冷やします。

ミュージカル要素が4,5回でてきます。工場の機器が奏でる騒音も、汽車が線路の枕木を叩く音も、セルマが拍子をとって工員や乗員と一緒にミュージカルが始まります。このミュージカルがまた面白い。数回ある踊りの場面はすべて、セルマの妄想ということです。夜勤で疲れているときに機械の音でみんなが踊りだすのですが、それが終わった後すぐに現実に引き戻されて、セルマの悲劇が始まります。ミュージカルのテンションから一気に突き落とされるセルマに、視聴者も簡単に感情移入してしまうでしょう。

 

一般的なミュージカルでは、ただ単に場面を盛り上げるためにミュージカルが挿入されて、そしてそれは劇中の出来事です。しかし本作の場合は、ミュージカルはセルマの妄想であるので、劇中劇ということ。

隣人に息子の手術費用を盗まれてから、展開は一気に進行します。ジャンプカットの効果も相まって、ラストの50分はずっと心臓が高鳴り、セルマに感情移入してしまいました。

 

下のYoutubeリンクは、マツコ・デラックスさんと伊集院光さんが本作に対して考察している音声です。あんな感想を表現できるようになりたいです。

 

最終的に言うと、2回目に観るのはもう何年も後になると思います。とても良い映画だったのですが、セルマの気持ちを再び感じるには時間がほしいところです。

 


マツコ・デラックスの「先週あれ観たよ編」:ダンサー・イン・ザ・ダーク』 - YouTube 

 

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