本えいが遅報

本と映画の感想ブログ

第028感 竜騎士07 著 『竜騎士07インタビューズ 完全版』・・・愛がなければ視えない

 本書は同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に』や『うみねこのなく頃に』で有名な竜騎士07氏のインタビュー集です。350頁超にも及ぶ対談が収録されています。

 

 

8つの章に分けられていますが、はじめの第1章だけが『ひぐらし~』で、残りの7章が『うみねこ~』の話題となっています。

 

 

第1章は、『ひぐらしのなく頃に解 目明し編』の頒布直後にインタビューされたもので、『ひぐらしのなく頃に』シリーズに一貫して存在する「恐怖」を著者がどう考えているのかを主テーマにしています。舞台設定の解明もさることながら、前半の「部活パート」から後半の「事件パート」への展開の変化具合が『ひぐらし~』の面白さの大きな要因だと思っています。部活メンバーである少女たちと主人公のライトノベル的絡みを楽しんでいたところに、突如として降り注ぐ残虐な事件の数々は、その落差の分だけより恐怖が増しました。さらに、閉鎖社会での「思い込み」から生じる恐怖についての著者の考察が興味深かったです。この「恐怖」の説明のほかにも、同人ゲームを制作していく面白さが書かれています。

 

 

第2章以降での『うみねこ~』会談は、主にミステリとキャラクタ―とシナリオの考え方について述べられています。

ミステリとしては、推理小説中で犯人が当てられるようになるのはどこまで読んでからなのかという議論が興味深かったです。犯人探しはミステリの楽しみ方の1つですが、探偵が「みなさんを集めてください」と推理を披露するまでは犯人を特定できない、というとそうではないのだというのが著者の考えです。証拠が完全に出る前から、様々な角度で検証を行えばだれが犯人であるかは特定できるし、むしろたくさんの仮説を並べ立てることこそが推理小説の楽しみ方だそうです。たしかに、『うみねこ~』プレイヤーの推理にそれぞれ点数をつけるとしたら、各人の考察メモ帳の文字数がそのまま点数になるという著者の言葉には賛成です。

キャラクターの考え方では、『ひぐらし~』の時には子どもたちにスポットライトが当たっていたものを『うみねこ~』では大人たちにも焦点を当てた物語にしようと考えていたとのことです。

シナリオの面で行くと、コミックマーケットで半年ごとに出される本シリーズはプレイヤーの多大な影響によって変化していきました。インターネットの発達した現代においての連載モノでは、「こいつが犯人でトリックは△○だ」と有力な説がピックアップされてすぐに全員共有の知識になります。それを製作側が取り入れて、「△○は違う」と本編で探偵が推理する。という流れを繰り返してプレイヤーとキャッチボールをしていくのです。『うみねこ~』では赤文字、青文字の描写がこの役目を果たしていました。

 

 

書店で見かけてつい買ってしまった本書ですが、『ひぐらしのなく頃に』や『うみねこのなく頃に』をプレイされた方には一読して得のある1冊です。