本えいが遅報

本と映画の感想ブログ

第034感 綾辻行人 著 『時計館の殺人 下』・・・たっぷり読み応えのある作品

上下巻で分かれた『時計館の殺人』の下巻です。「第45回日本推理作家協会賞」を受賞した本作ですが、確かにこれは面白い。

 

 

犯行に使われたトリックで一番かなめのものが、種明かしをした後でさらに重要な要素になっていました。著者の良さは、単なるトリックの奇抜さや目新しさなどではなく、描写の丁寧さ綺麗さにあるんではないかと思います。

 

 

今回はかなりの人数が命を落としてしまうのですが、犯人がその殺しをするに至った動機が興味深いです。ある者は本来の目的から、ある者はとっさの思い付きから殺害されてしまいます。

 

 

淡々と行われていく殺人。もう少しそのあたりの描写が多くてもいいのでは? と思われる方もいるのではと感じたほど、殺害描写が多くありませんでした。確かに、犯人が現れて、被害者が驚き、殺害される。という簡単な展開が繰り返されていましたが、これはつまりある人物が殺害されたという結果だけが重要なものなのだと思います。残酷な殺人描写を楽しむものが目的なのではない、というようにも受け取れました。

 

 

上下二巻からなるこの作品は、なかなかに長いものでしたが、同時に読んだ後の金緊張感は相当でした。面白かったです。

 

 

まだまだ多くのミステリ作家の作品を読んでみたいと思っています。また、多ジャンルの作品、新旧問わず、読まず嫌いをせずに楽しんでいきます。