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【映画感想】『レオン完全版』:初見の感想と『フィフス・エレメント』との比較

こんにちは。

今回はリュック・ベッソン監督作品、1996年公開『レオン完全版』についての感想です。

これを同監督作品、1997年公開の『フィフス・エレメント』との比較をまじえて、まとめてたいと思います。

 目次

 

 

あらすじ

リュック・ベッソン監督作品「レオン」に、22分の未公開映像を加えた完全版。舞台はニューヨーク。家族を殺され、隣室に住む殺し屋レオンのもとに転がり込んだ12才の少女マチルダは、家族を殺した相手への復讐を決心する。少女マチルダを演じるのは、オーディションで選ばれ、本作が映画初出演となったナタリー・ポートマン。また、寡黙な凄腕の殺し屋レオンをベッソン作品おなじみのジャン・レノが演じている。

 (eiga.comより引用)

 

感想

本作の感想を、『フィフス・エレメント』との比較とともに、まとめて行きたいと思います。

0. 作品との出会い

『レオン完全版』

前々から本作に興味はありましたが、なかなかきっかけがなく鑑賞するに至っていませんでした。そんな折、友人が本作を好きだというので、いい機会だと思い見ることとしました。今回はNetflixの日本語吹替で鑑賞しました。本作の吹替にはいくつか種類があります。Netflixの吹替は、ジャン・レノ演じる主人公レオン・モンタナ役を大塚明夫さんが、ナタリー・ポートマン演じるヒロイン、マチルダ役を宇山玲加さんが、ゲイリー・オールドマン演じるスタンスフィールド役を山寺宏一さんが務めているバージョンでした。詳しくはWikipediaのキャストの項を参照。

レオン (映画) - Wikipedia

 

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フィフス・エレメント

 家族が当作品を好きだったため、幼いころから録画したVHSを何度もなんども繰り返し視聴してきました。その際の吹替は、日本洋画劇場のいわゆる「日本テレビ版」。

ゲイリー・オールドマンが演じる、悪役のゾーグ役の吹替を、佐古正人さんが担当しています。ゾーグのキャラクターがコミカルに解釈されていて、いちばん好きなバージョンです。

 

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家族で見る娯楽映画としては、『フィフス・エレメント』の方がよさそう。多くのアクション、分かりやすいストーリー、鑑賞後の気分。だからこそリビングのテレビで何回も見ていたのかもしれません。

1. ふたりの出会い

『レオン完全版』

隣室のレオンとマチルダ。家族に虐待されている12歳のマチルダが買い物へ行っている間に、マチルダの家族が麻薬密売組織に皆殺しにされてしまいます。それに気づいたマチルダが、陰で殺し屋をしているレオンの部屋へとっさに助けを求めたことで、ふたりは出会います。

フィフス・エレメント

いわゆる「落ちもの系」。『天空の城ラピュタ』の冒頭でパズーがシータを受け止め、『交響詩篇エウレカセブン』1話でエウレカがニルバーシュで乗りおりてレントンと初めて会うなどなど。私の大好きな出会い方。

コーベン・ダラス(ブルース・ウィリス)が運転するタクシーの屋根めがけて、宇宙人の体細胞から復元されたリー・ルー(ミラ・ジョボビッチ)が落ちてくるというもの。

 

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本作におけるふたりの出会い方が、非常に異質。ボーイミーツガールとして、落ちもの系が好きな私にとっては珍しかったです。殺し屋として活動するなら邪魔になるマチルダをかくまうレオンの優しさに同情し、そんなレオンに惹かれるマチルダに共感します。

 

2. ふたりの関係性

『レオン完全版』

レオンがマチルダに銃の取り扱いを教える代わりとして、マチルダはレオンに字の読み書きを教えます。まるで小学校の先生が子供に字を教えるかのように。

また、レオンは自分を「まだ大人になれていない」と表現した一方で、マチルダは「私はもう大人。あとは年を重ねるだけ」と言っています。

ふたりは宿泊先のホテルで親子だと偽っていました。にもかかわらず、後日ホテルの受付に対してマチルダは、自身をレオンの愛人だと発言してしまい、そのホテルを追い出されることになります。

チルダは大人になりたい、そしてもう大人だと主張していますが、それがまた子供っぽい。

拘束されたマチルダをレオンが救出したシーンでふたりは抱き合いますが、その身長差は大きく、「背伸び」をしてもレオンと釣り合わないカットは印象的でした。

フィフス・エレメント

コーベンとリー・ルーは終始、お互いを対等な関係として認識しているように演出がなされていたように感じていました。

実際、リー・ルーが人類にとって重要な存在であるとコーベンが知ったときも、リー・ルーが危険な目に遭いそうなときも、男として守るポーズはとるもののマチルダに対する姿勢とは違いひとりの女性として接していました。

また、宇宙船に乗船するシーンでは、コーベン・ダラスとリー・ルー・ダラスという、身分を偽り夫婦としてふるまっています。

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本作でのふたりは、年齢の差はもちろんのこと、師匠と弟子としても立場の違いが描かれています。

一方で『フィフス・エレメント』では地球人と宇宙人という違い。また、世間的にリー・ルーは人類を救うことのできる大切な存在とされています。

チルダの家族が皆殺しにされるという極限状態で始まった共同生活は、代わり映えのしないレオンの生活に潤いをもたらします。

 

3. 結末

『レオン完全版』

 

チルダの仇を殺害していったレオンは、黒幕で麻薬取締官のスタンスフィールドの怒りを買います。SWATに追い詰められ、マチルダは「ふたり一緒じゃなきゃ逃げない」とごねます。しかしレオンは「愛している」とマチルダをなだめ、狭い通路をひとり先に行かせます。警察総出に取り囲まれたレオンは、マチルダにとって最後の仇であるスタンスフィールドを巻き添えに死ぬことが精一杯でした。身寄りのなくなったマチルダは、レオンが大事にしていた観葉植物とともに施設で過ごすという最後です。

 

フィフス・エレメント

リー・ルーが地球を救うには、風化水土を超えた第5の要素(エレメント)として、愛を知る必要がありました。地球の危機が迫る中、リー・ルーとコーベンはお互いの愛情を確認し、地球に接近する巨大物体を退けることに成功。ふたりは愛し合いハッピーエンドとなるのでした。

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レオンは「遠くでふたりで静かに暮らそう」と警察に囲まれそうになりながらマチルダに言いますが、本当に警察の包囲網から抜け出せたとして、それは本当に叶う願いだったのか。人殺しを重ねてきたレオンは、いつ復讐にあうか分かったものではありません。そんな状況でマチルダと一緒に安心して生活できるのでしょうか。

フィフス・エレメント』のコーベンは、軍人として活躍してきた、簡単にいえば正義の人間。そんな彼がハッピーエンドを迎えるのは、ある意味当然なのかもしれません。

 

おわりに

 同一監督の公開年が近い作品として、『フィフス・エレメント』を取り上げました。

当時として高い映像技術が使われている当作品と比べ、『レオン完全版』は銃撃戦こそあるものの、車が空を飛ぶわけでも、ましてや人類を救うわけでもありません。

しかしその分、レオンやマチルダに寄り添った感情表現や、ふたりの関係性に重きが置かれていたように感じました。

もっと早く観ておけば良かったと思いましたし、これから何度も観たい作品です。

また、かたき討ちのために拳銃を持って警察署に乗り込んだマチルダが刑罰を受けなかった側面を考えると、本作の結末は、すべての罪を主人公がかぶった『ベイビー・ドライバー』を思い起こさせます。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。