本えいが遅報

本と映画の感想ブログ

第016感 綾辻行人 著 『水車館の殺人』・・・「館」シリーズ第二弾!

本書は、『十角館の殺人』に続く「館」シリーズの第二作目です。

 

舞台は嵐に襲われた館。三連水車の廻る動力で電力を得る孤立した環境。登場するのは、仮面をつけた水車館の当主、<塔の部屋>で孤独に暮らす美少女、執事と家政婦、水車館に飾られている絵画が目当ての数人。そして「探偵」、島田潔。島田は十角館にも登場する「探偵」で、本書でも殺人やそれに続く謎を解いていきます。

 

テキストの構成は、現在(1986/09/28~29)と過去(1985/09/28~29)が交互に流れていくものとなっています。一年前に起こった殺人、失踪、絵画焼失事件が三人称で語られていく中、現在の描写は水車館の当主が担っています。現在の探偵である島田が、一年ぶりに集まった皆から話を聞いて事件の解決を目指します。

 

十角館の殺人』との比較をしますと、

  • 人物、心理、情景描写が増えている。
  • パズル的要素も多くなった。
  • 犯人やトリックは途中で分かる。
  • でも、再読すると再発見がある。

が挙げられます。

 

描写が増えているのは犯人を特定するのに役に立ちました。また、各パートごとの現在地と時刻が記載されているので、いつどこでだれが何をしたかがよくわかります。犯人の正体は消去法で特定できて、そのトリックもぼんやりと想像がつきました。

が、その動機が最後までわかりませんでした。その動機は、島田の種明かしで判明します。犯行動機を頭の片隅に置きながらパラパラと再読すると、「あぁ、なるほど」と犯人の感情がわかるような描写がありました。まだまだ読み込みが足りませんね。

 

そして、ラストの展開はまさに一読の価値ありです。良い読後感とでも云いましょうか。ぞくぞくっとした感じです。

島田が車椅子を投げ出した時に、「これはわざとだな」と思ったのですが違ったようです。仮面の当主が藤沼本人なら足が動かない、偽物の当主ならとっさに足を動かしてしまう。これを判別するために島田が故意に投げ出したのかと。